人間の声で──ジェンダー二元論を超えるケアの倫理
『もうひとつの声で』初版から四十余年。〈ケアの倫理〉の首唱者がたどり着いたラディカルな新境地!
ケアの倫理が発しているのは、〈もうひとつの〉声にとどまらず、ジェンダー二元論や家父長制の支配に抵抗し、全ての人びとの解放を志向する〈人間の〉声にほかならない。「不逞不遜な大胆さ」を奮い起こして、この世の不正義に抗おう――そう私たちに呼びかけてくる。
キャロル・ギリガン 著/川本隆史・山辺恵理子・米典子 訳
四六判並製/272頁/本体2,700円
2025年11月19日刊行 ISBN:978-4-86258-164-8
【著者】キャロル・ギリガン(Carol Gilligan)
1936年ニューヨーク生まれの心理学者・表現者。1958年スウォースモア・カレッジを卒業(英文学専攻)後、1960年ラドクリフ・カレッジの修士課程(臨床心理学)修了。E・H・エリクソンに師事し、1964年ハーバード大学の博士号(社会心理学)を取得。1982年初版の代表作『もうひとつの声で』は16の言語に翻訳され(日本語訳は風行社、2022年刊行)、世界で70万部以上のベストセラーとなっている。現在、ニューヨーク大学ユニバーシティ・プロフェッサー。第40回京都賞2025(思想・芸術部門)を受賞。
【訳者】
川本隆史(かわもと・たかし)
1951年広島市生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程(倫理学専攻)修了。博士(文学)。東京大学および東北大学名誉教授。著書に『現代倫理学の冒険』(創文社、1995年)、『ケアの社会倫理学』(編著、有斐閣、2005年)、『〈共生〉から考える』(岩波現代文庫、2022年)ほか、共訳書にA・セン『合理的な愚か者』(勁草書房、1989年)、J・ロールズ『正義論〔改訂版〕』(紀伊國屋書店、2010年)などがある。
山辺恵理子(やまべ・えりこ)
1984 年東京都生まれ、米国NY州育ち。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。早稲田大学文学学術院准教授。著書に『リフレクション入門』(共著、学文社、2019 年)、『ひとはもともとアクティブ・ラーナー!』(編著、北大路書房、2017 年)、訳書にN・ノディングス他『批判的思考と道徳性を育む教室』(監訳、学文社、2023年)、F・コルトハーヘン他『教師教育学』(共訳、学文社、2010 年)などがある。
米典子(よね・のりこ)
東京大学大学院教育学研究科博士課程を単位取得満期退学。著書に『イギリス哲学・思想事典』(共著、研究社、2007年)、訳書にN・ダニエルズ/B・ケネディ/I・カワチ『健康格差と正義』(共訳、勁草書房、2008年)、R・オルドリッチ『教育史に学ぶ――イギリス教育改革からの提言』(共訳、知泉書館、2009年)、D・ヤッカリーノ『もぐらのモリス』(共訳、ぷねうま舎、2020年)などがある。
【目次】
エピグラム
著者と訳者の往復書簡
緒言
序
第一章 女性たちの声と女性たちの沈黙
第二章 妊娠中絶の意思決定について誰しもが沈黙する理由
第三章 イヴの登場
第四章 道徳的損傷/毀損
第五章 もうひとつの声で 第二幕
結び ケアの倫理
原注
初出一覧
訳者あとがき
文献一覧
用語索引